基礎知識

DNA と遺伝子の違い

DNA を日本語に訳した言葉が遺伝子、と誤解している人もいるかもしれませんが、両者はイコールではありません。遺伝子は英語で gene。一方、DNA は deoxyribonucleic acid の略で、日本語では「デオキシリボ核酸」と訳されます。結論から言うと、DNA は細胞の中にある「物質」であり、その DNA の中に入っている「情報」が遺伝子です。

遺伝子とは、髪の色や血液型など、親から子へ受け継がれる個々の性質を決める因子。一つの遺伝子から一つのたんぱく質が作られます。つまり、遺伝子とは「たんぱく質の設計図」です。1953 年、ジェームズ・ワトソン(米)とフランシス・クリック(英)によって、この遺伝子が DNA の中に入っていること、DNA が二重らせん構造をしていることが確認されました。人間の細胞は約 60 兆個ありますが、そのすべての細胞の細胞核の中に DNA が存在し、1 個の細胞の中に全長 2m にも達する DNA が細かく折りたたまれて収まっています。DNA の中で「たんぱく質を作る情報が入っている部分」が遺伝子と呼ばれています。

2004 年の時点で、人間の遺伝子は 2 万 1787 個と言われています(現在では約 2 万 3000 個とされています)。ところが生物全体で見ると、これは決して多い数ではありません。「ウニ」の遺伝子は人間よりやや多く、そのうち 70 %が同じ遺伝子だといいます。また、「ミジンコ」は 3 万個以上の遺伝子を持っています。「遺伝子が多いほど高等」と単純に言えないのも面白いところです。

遺伝学的検査に関する基礎知識

遺伝子を調べることで、さまざまな病気の診断・治療・予防を高いレベルで行うことができるようになりました。例えば感染症。細菌やウイルスに感染すると、細胞の中にそれら微生物の DNA が見つかるので、短時間で正確に感染しているかどうかを判断することができます。胎児が正常な遺伝子を持っているかどうかを調べる「出生前診断」という検 査もあります。近年いよいよ注目が高まっているのが、「病気へのかかりやすさ」を調べる遺伝学的検査です。

病気の中には特定の遺伝子と関係すると言われているものもあり、その遺伝子を調べることで「病気へのかかりやすさ」に関わる情報を得ることができます。最近では、がんや糖尿病など生活習慣と関わりの深い病気に対する遺伝学的検査が可能になってきています。

ただし、遺伝学的検査でわかるのはあくまで統計的なデータに基づいた「病気にかかりやすさ」。いくら「かかりやすい」という結果が出ても発症しない人もいれば、逆に「かかりにくい」という結果が出ても発症してしまう人もいます。

とりわけ、がんは生活習慣病の一種とも言われるくらいで、生活習慣が大きく影響する病気です。正しい食生活や定期的な運動を心がけるとともに、そのがん特有のリスクファクター(喫煙や大量の飲酒など)を避けることで、発症の可能性を下げることができます。必要以上に恐れず、生活を見直すきっかけと考えましょう。